和夜、白夜、千夜




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まもなく到着であった。

 
都市間移動列車「レジューム」の到着時刻に決して狂いは無い。
それだけを自慢する車内アナウンスを乗客は何度も聞かされている。

しかし乗客達は、この世に残る唯一の「乗り物」に皆満足していた。

形式的なアナウンスさえ、
古き良き時代を回想させるには充分な演出なのである。


「おじさん」
「なんだい?」


たまたま乗り合わせた乗客同士が、
旧知の仲のように語り合う光景は珍しく無い。

皆、少しでも時間を無駄に過ごさぬようにしている。
「レジューム」は数ヶ月先まで予約で満たされている。
この「旅」はめったにできない贅沢なのだ。


「また会える?」
「ああ、会えるさ」



男は少年にウインクしながら約束した。
見る間に少年の顔に満面の笑みが広がった。

そして、彼もまた小さくウインクした。

照れながら大人の真似をする少年の仕草は、男の心を潤すには充分であった。
列車を降りるまでのくつろいだひと時を、「男」は心から楽しんでいた。