和夜、白夜、千夜




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視点は、腰までつかる透明度の高い小さな湖。
そのほとりに木々の梢が垂れ下がり、水面に陰を落としている。
やがて、揺れ動く水面に誘われるかのように黒い蝶が舞い降りる。
その羽の、形容し難い紋様が羽ばたきと共に揺らめき、目を奪う。

やがて蝶が水面と交わり、そのまま水中へと・・・

蝶は何事も無かったかのように羽ばたき続ける。
むしろ、光と透明な水の分子によりその存在を誇張している。
視点は水中へ移り、力強く羽ばたき続ける蝶を追う。

しばらくして急に視点が移動した。
そこは、湖の入り口である森の切れ目であった。





突然。

私は違う時空へと飛ばされる・・・



小さな部屋。
そのなかでひっそりと床に座り込む少女がいる。

私は、この世界の創造主として彼女が自分で作った空間に閉じこもった
事を知っている。さらに、なぜか彼女のそばで仰向けに横たわっていた。
体は動かない。視線のみが移動し、部屋の中の様子を観察している。
勉強机や本棚のある、普通の子供部屋のように見えるが、少し薄暗い。

やがて、少女が近づいて何かを私に話かける。
何も聞こえない。しかし、胸の奥から張り裂けそうな感情が持ち上がる。

私は「ちがう」と言っている。
たぶんそうだ。だが、何も聞こえないので良くは解らない。
私は何度も訴えかけているようだ。
それに彼女はいろいろな表情で答えている。

静寂の会話がしばらく続く。

すると、彼女は嬉しそうな微笑を私に向けた。
その瞬間、部屋のドアを叩く大きな音が部屋の中を埋め尽くし、
呪いが解けたように私の体が動いた。

私は彼女の手を右手で引き、ドアへと向かう。
そして、左手で勢い良くドアを引く。

明るい陽光がドアを通じて部屋の中を満たした。
ドアの向こうから数人の屈強な黒づくめの男達が私を迎えた。





私は、外へ出た。
そして、役目を終えた私は再び別の時空へと飛ばされた・・・









Water Butterfly : Image by Little Eden
丘の上の天使 : Image by First Moon