時は未来。
列車は空を行き交い、普通の移動にさえロマンを感じれる。
まるでそこはパーティールームのようにも見え、
空間の4分の1は外界を望む事ができた。
夜。夜空の美しいその夜。
偶然にしては出来すぎたように列車最後尾に一人の女性が乗っていた。
そして、夜空から現れたプラットホームと、
静かに交わった列車。
緩やかな弧を描くような静止と共に、
一人の青年が乗り込んできた。
青年は踊る心臓の鼓動を必死で押さえながら、
あれだけ練習した予定を一瞬忘れてしまった。
不覚にも、ほんの一瞬彼女に見とれたせいである。
無理も無い、苦労してここにたどり着いたのは、
決して偶然では無いのだから。
が、すぐ、平静を装って彼女に問いかける。
「すいません。えっと、この列車たしか止まりましたよね」
「えっと・・何だっけ、あ・・」
「あ○○○」
「そう。そうです。ははは、ありがとう」
彼女は微笑んでいた。青年は嬉しくて叫びだしそうだった。
が、それを必死にこらえながら青年は、
ほぼ予定通りの世間話を続けた。
いい感触だった。思った以上に話が弾む。
彼女の気持ちが自分に向いているのが確かに感じられた。
が。
嬉しさのあまり、青年は予定に無い事をしてしまった。
本人も普段使った事の無い、使い方すらうろ覚えの・・・
「魔法」を使ってしまったのだ。
青年がもう一人そこに現れた。
そこに、焦った自分の顔がもう一つある。
「あ、いや、これは・・・。僕たち双子です」
青年は無茶苦茶な事を言い切ってしまった。
青年は二人で必死に彼女に説明した。
もう一人の自分は、普段片方の自分の中に居て、
なんらかのショックで目覚めて実体化してしまう。
そんなファンタジーな内容を抜群のチームワークで
青年は彼女に話終えた。そうするしか無かった。
できれば、泣き出したかったが、青年は必死だった。
魔法学校でちょっとした偶然から彼女を知り、
一目惚れしてしまった。
青年は恋は初めてだった。
・・・・あまりの事に、青年は眠気を感じた。
自分でも良く解らなかったが、いつのまにか座席に座り
テーブルの上にうつ伏せになっている。
両手はテーブルの上にある。
意識はあるのだが、朦朧としている。
頬に当たるテーブルが冷たく心地よい。
青年は、右手の上に暖かな感触を覚えた。
彼女の息を感じる。
彼女は、
そっと青年に覆いかぶさり、
愛おしげに青年の背中に顔を埋めていた。
これは・・・
夢なのか?
僕は何故動けない?
やがて、昔ながらの銀河鉄道のような車掌が現れ、
3日間の停車を告げた。
そこは、何故か夏まつりの真っ最中。
太鼓の音と、人ごみの中の一角にたたずむ、
仲のよさそうなカップルが、
満天の星空を眺めていた・・・
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