和夜、白夜、千夜




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ウチはちょっと高台になっていて、
国道に出るまでゆるやかな坂になっている。


そしてその道端には、元はため池の水と思われる
比較的透明度の高い水路が流れている。
広いところで1メートル。狭いところで30センチ。
小さな子供達がときどきうずくまって、視線が何かを追っている。
そんな、いろんな生き物の生息場所であり、今年20歳になった
息子もそんな時代を過ごしたものだった。


今日も暑かった。


2キロ離れた公園まで走り、ひととおり運動したあと
歩いていったん国道まで出た。
そして、コンビニですこし買い物をした後、
先ほど説明した道をゆっくり家に向かって上っていると・・・・


なにやらヒョコヒョコ小さなものが水路を下ってくる。
その部分は1メートルの幅があり、深さもかなりある。


「なんだ?」


と眼をこらすと・・・・体長15センチくらいの亀だった。


何故か1枚の黄色い木の葉をその背中に乗せ、
自分の体を完全に沈める事のできない水量の水路の底を
かなり急いだようすで前進している。

ときおりその首を斜め前方に突き出し、
様子を伺っているようだが、すぐに水に頭を沈めて急ぐ。

彼は基本頭が水に入っている状態が非常に速い。


でも・・・・どこに行くのだろう。


彼の目指す先は、草が大量に生い茂っていて、障害となっている。
とても彼の力では・・・・

と思いながら彼を見つめていると、その水路の上に大きな
鉄板が4枚ほどかかった場所に突入した。
そこは、道から未舗装の駐車場に入る場所なんだが、
水路にとっては長いトンネルのようになっている。


出口で待った。


少しかがめば中をのぞく事ができるが、暗くてよく見えない。

数分後。



 
彼の背中に乗っていた黄色い木の葉だけが流れて来た。
彼の姿は無い。
そういえば、このあたりは少し水量が増して彼が全て
水中に入る事ができるようなんだが・・・・・





 
真夏の小さな出来事でした