和夜、白夜、千夜




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そもそも現場検証はしないはずだった。 
が、犯人の逃走経路の証言が、 
俺とお嬢で食い違ったところから話が始まった。 


「いったん道路側に出たの!」 

「ええ・・・、そんな記憶ねぇよ」 


結論としては俺の記憶違いなんだが、「つかまえて!」の次に残る 
頭の中の映像は、犯人が走り去るところ。 

次の瞬間スイッチが入ってダッシュしてたから殆ど覚えていない。 
ましてや、捕まえた後はそのまま逆方向へと連行したので現場状況を 
確認する間もなく警察まで来ている。 


「ええと、じゃあ現場までお願いしますね」 


と、刑事さんが距離を測るコロコロ(って言うのか?)を手に持って言った。 
お嬢はそれが気にいったらしく、 


「持たせて、持たせて」 


とはしゃいでいた。 


なんか、犯人役が首にかけるっぽいでかい看板も用意されていた。 
生まれて初めて経験する現場検証はコンビニ入り口から始まった 


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現場検証を行う刑事にはそれぞれ役割があり、 
いまどきのデジカメによる撮影役、犯人役、全体に指示を出して距離を 
測る役と慣れたもんだった。 

その指示に従い、直線で見える範囲で終点に犯人、始点に俺という感じ 
で撮影しながら距離を測って行く。 

撮影時には、俺は犯人を指差してそちらを見るように指示された。 


「こんなもんが記録に残るんかよ・・・」 


と思いながら、「犯人」という看板首にぶらさけげた若い刑事を 
気の毒にも思った。 


「ここでお金を受け取りました」 


と、逮捕地点ではお金を実際に犯人役の刑事から受け取っているところ 
を撮影した。いろいろ思うところはあるが、俺としては 


「これで終わりや・・・」 


と長い長い一日の最後の作業を噛み締めていた。 


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「すいませんね。もう一度調書書き直しますんで」 


忘れてた。まだ終わって無い。 
30分くらいかかったであろうか、もういちどプリンタで出力しなおした 
書類を読み上げるのにつきあった。 

本当にこれが最後である。 


「おつかれさまでした」 


「じゃ、どうも・・・ってあいつらおらんがな」 


刑事さん達の間に笑いが起こった。 
彼らも本当におつかれさんである。 

きゃつらは、部屋を出たところにある椅子に座って雑談していた。 


「おい。バーベキューや」 



そう。 


今日の本当の目的に向かう。 
事件発生より6時間が経過していたのだった・・・