「どうぞ、こちらへかけて下さい」
なんか妙に座りごこちの悪い窓際の事務机に座らされた。
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被害者。
被害者のそばで全て見た目撃者。
犯人を逮捕した俺。
それぞれに一人づつ刑事が付いて事情を聞く。
けっこう同じ事を何度も聞かれる。
もう、ほとんど現行犯なのに、
彼らは、そこにいない「検察」という支配者の影を
ひしひしと感じている。
それがまったくド素人の俺らにも伝わってくる。
最初1時間くらいで終わると思っていた我々ド素人は、
見慣れぬ刑事部屋のなかの雰囲気を、その1時間で味わいつくし、
やがてとうぜん飽きて来た若い night 組の面々は、
その場所にそぐわぬ雑談を始める。
「トリハロメタンって何〜」
「何で刑事になろうと思わはったんですか〜」
「煙草吸いすぎると体に悪いですよ〜」
等と、若い女性を相手にする若い刑事の心中はいかばかりか・・・
というのを尻目に俺は、渋くて味のある小柄なおっさんの横で
彼がノーパソにタイプしているのを眺めている。
「えっと、犯人は出口から出てきたんですね?」
正直なんであんな単純な作業にあんなに時間かかったか
全く覚えていないのだけれど、めずらしさからなのか
3人の教え子と雑談をたっぷりしたせいか、
今考えると「あっ」というまの出来事のようだ。
良くおぼえているのは、何故かキャノンのプリンタの空箱
が3つも棚の上に置いてあった事である。
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