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千夜一夜へ
日時: 2008/04/11 18:12
名前: night walker






時は未来。 

列車は空を行き交い、普通の移動にさえロマンを感じれる。 
まるでそこはパーティールームのようにも見え、 
空間の4分の1は外界を望む事ができた。 

夜。夜空の美しいその夜。 
偶然にしては出来すぎたように列車最後尾に一人の女性が乗っていた。 

そして、夜空から現れたプラットホームと、 
静かに交わった列車。 

緩やかな弧を描くような静止と共に、 
一人の青年が乗り込んできた。 




青年は踊る心臓の鼓動を必死で押さえながら、 あれだけ練習した予定を一瞬忘れてしまった。 不覚にも、ほんの一瞬彼女に見とれたせいである。 無理も無い、苦労してここにたどり着いたのは、 決して偶然では無いのだから。 が、すぐ、平静を装って彼女に問いかける。 「すいません。えっと、この列車たしか止まりましたよね」 「えっと・・何だっけ、あ・・」 「あ○○○」 「そう。そうです。ははは、ありがとう」 彼女は微笑んでいた。青年は嬉しくて叫びだしそうだった。 が、それを必死にこらえながら青年は、 ほぼ予定通りの世間話を続けた。 いい感触だった。思った以上に話が弾む。 彼女の気持ちが自分に向いているのが確かに感じられた。 が。 嬉しさのあまり、青年は予定に無い事をしてしまった。 本人も普段使った事の無い、使い方すらうろ覚えの・・・ 「魔法」を使ってしまったのだ。 青年がもう一人そこに現れた。 そこに、焦った自分の顔がもう一つある。 「あ、いや、これは・・・。僕たち双子です」 青年は無茶苦茶な事を言い切ってしまった。 青年は二人で必死に彼女に説明した。 もう一人の自分は、普段片方の自分の中に居て、 なんらかのショックで目覚めて実体化してしまう。 そんなファンタジーな内容を抜群のチームワークで 青年は彼女に話終えた。そうするしか無かった。 できれば、泣き出したかったが、青年は必死だった。 魔法学校でちょっとした偶然から彼女を知り、 一目惚れしてしまった。 青年は恋は初めてだった。 ・・・・あまりの事に、青年は眠気を感じた。 自分でも良く解らなかったが、いつのまにか座席に座り テーブルの上にうつ伏せになっている。 両手はテーブルの上にある。 意識はあるのだが、朦朧としている。 頬に当たるテーブルが冷たく心地よい。 青年は、右手の上に暖かな感触を覚えた。 彼女の息を感じる。 彼女は、 そっと青年に覆いかぶさり、 愛おしげに青年の背中に顔を埋めていた。 これは・・・ 夢なのか? 僕は何故動けない? やがて、昔ながらの銀河鉄道のような車掌が現れ、 3日間の停車を告げた。 そこは、何故か夏まつりの真っ最中。 太鼓の音と、人ごみの中の一角にたたずむ、 仲のよさそうなカップルが、 満天の星空を眺めていた・・・
メンテナンス

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ヨシコの店 ( No.11 )
日時: 2007/09/24 22:43
名前: 白夜
「いつも混んでますね、ヨシコさん」

「ラリー」

「はい」


「いつになったらママって呼んでくれるの?」



第3区では知る人ぞ知る「ヨシコの店」の女主人である。 彼女はその歳になっても衰える事を知らない美貌を輝かせながらラリーを見つめている。 「勘弁して下さいよ、私はあなたを尊敬しているんですから」 「5区の筆頭整備士さんにそう言われるのは光栄だけど、ラリー?」 「えっ? はいっ」 ラリーは少し酔いの回った赤い顔をヨシコのほうに向けた。 「母親は息子に尊敬されてもうれしくはなくてよ」 ヨシコはその細く長い人差し指をラリーの形のいい鼻の先に軽く押し当てて言った。 「・・・・、もっともです」 まるで熊を想像させるような己の巨体を揺すりながら笑うラリーをヨシコは楽しそうに眺めている。 この情景はこの区では知らぬ者がない事実でありながら7不思議の一つとしても数えられていた。 ラリーは5区と呼ばれる研究区の最高責任者であった。 ヨシコはその母であると同時にいわゆる歓楽街である3区の中心にある酒場の主人である。 事情通から見れば不思議な事ではないが、研究区と歓楽街は根本的に相反する性質を持っている。 いわゆるエリートと呼ばれる人種はこの区ではあまり歓迎されず、 客のほとんどはこの区の住民と作業区の人間ばかりであるのも事実であった。 「ラリー」 「はい、ヨシコさん」 ヨシコは少し眉を上げて「頑固な子ねェ」という表情を見せながらラリーに言った。 「ケンの事だけど・・・・」 ラリーは「ケン」という名を聞いたとたん、その大きな身体を一瞬硬直させた。 そしてヨシコから目をそらし、うつむいたまま頭をあげようとしない。 が、そのまま母の問に答ようと口を開きかけた。 ヨシコの反応はすばやかった。 ラリーが声を出す前に自らの言葉でそれを遮った。 「いいのよラリー、言いにくければ」 「大体の様子は情報屋から聞いて知っているけど、ちょっと心配なだけ。」 ヨシコは優しくラリーに言った。 それは、母親らしい気使いであった。 いくら親子とはいえ、超機密情報に関係する話題をこのような場所で口にする事が、 ラリーの立場では不可能である事はたとえ母親でなくても容易に想像できる事であった。 しかし・・・ ラリーは呟くようにゆっくり話始めた。 「ケンの飛行テストはうまくいきました、テストとしては」 「今日も本当は二人で来るはずだったんですが・・・」 「あいつ、帰ってきてから様子が変なんです」 ヨシコは黙って聞いている。 ラリーはグラスに残る琥珀色の液体を一気に飲み干し、さらに続けた。 「まあ、それだけなら心配する事もないんですが」 「実は・・・」 ラリーは一瞬ためらったかのように見えたが、吐き捨てるように言った。 「メインコンピュータの記録が一部欠落してたんです」 「えっ!?」 ヨシコは思わず大きな声を上げそうになり、あわてて両手で押さえた。 そしてその大きな瞳を左右にゆっくりと動かし、あたりの様子をうかがった。 そしてラリーに目で「マスタールームへ」と告げた。 「マスタールーム」。それはヨシコのプライベートルームであり、彼女が許可せぬ限り いかなる権力をもってしても入室を許されぬ部屋であった。 街の者はその過去の事実より、口を揃えてそこを「要塞」と呼んでいた。
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天敵 ( No.12 )
日時: 2007/09/24 23:19
名前: 白夜
「兄さん・・・」


いわゆるドスの効いた低くかすれた声が、小さなバーの空間を満たした。

カウンターの中でカクテルを作っていたバーテンの手が一瞬止まる。
表情からは、動揺は見受けられないが、額には汗が滲んでいる。
決して、視線は自分の手から離さないという決意が伺われた。


「僕・・・ですか?」


カウンターには彼しか居らず、その返事はいささか間が抜けてるようにも思われるが、
たしかに、聞き返したくなるような相手ではある。

が、全く動じぬその様子はその風貌からすれば違和感を感じずにはいられない。


「天敵・・・ってのを知ってるかい?」

「はあ・・・」


闇に溶け込みそうなその男からは一方的な問いかけが続いていた。


「それを前にすると、本能が恐怖する。それを天敵って言うのさ」

「そう・・・ですね」


「そうさ」

「・・・人はどんなに頑張っても天敵がその気になった前ではどうにもならんのさ」

「はい・・」

「え? 人間の話ですか?」


確かにその男の話の内容は要領を得ない。
しかし、だからと言って普通の人間が返せる答え方では決して無い。
その証拠に、バーテンは完全に動きを止めて震えはじめている。


「人間じゃねぇよ、俺は」


とんでもない物言いではあるが、もし、言葉にも霊が宿るのであれば、
森羅万象は、言霊の一部となってそこではじけとんだに違い無い。




「・・・昔から、俺らは人を喰ってた」

「・・・・」

「それをやめちまったのには理由がある」


「すみません・・・僕、帰っていいですか?」


ガチャン

バーテンがグラスを割った。
あわててカウンターの中に蹲ってしまった。


「兄さん」

「俺は最初からその気であんたにふっかけてるんだが・・・」



「・・・人間と名の付く生き物なら必ずあのバーテンみたいになる」

「これは決まりごとなんだ、俺は天敵だからな」


「はあ」


「つまりだ」

「お前は人間じゃねぇわけだ・・・・」


青年は初めて動揺していた。しかし、それは恐怖では無く目の奥に光があった。

それはここにもし第三者が存在したなら、喜びと見えたはずである。


「おじさん。一杯奢らして下さい」

「ほほう・・・・」

「こりゃ、当分退屈しなくてすみそうかねぇ」


闇の似合う男の最高の笑みがこの部屋の中の空気を一変させた。

この世の、


運命が大きく変わろうとしていた・・・・








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